変動金利の住宅ローンは危ない?(1)

変動金利のローン
最近は、住宅ローンを変動金利で組む人が増えていますね。

変動金利というのは、短期金利に連動してローンの金利が変わるのが特徴ですが、固定金利のローンよりも大幅に金利が安いというメリットがあります。なぜ安いのかというと、変動金利は「金利変動リスク」をお客さんが負うので、銀行側のリスク管理コストが安く済むからですね。

しかも今は超低金利時代。
「住宅ローン金利 0.975%」などといった、1%を切るような格安のものも増えて来ました。変動金利のおかげで月々の支払いが安くなり、家も買いやすくなりました。僕もマンションを買うときは、一部を変動金利のローンにしました。


金利変動リスク
でもちょっと待って下さい?
住宅ローンというのは、20年とか30年とか非常に長い期間借り続けるものですよね?その間金利が1%以下であり続けるなんてことがあるんでしょうか?

また、日本国債の信用が懸念されるなかで、国債の長期金利が突然上がる可能性が少しずつ高まっています。万が一そうなったとき、住宅ローンはどうなるのでしょうか?月々の支払いは大丈夫なのでしょうか?




結論から言うと、アウトです。
長期金利が上昇すると、日本円の信用も同時に下がり、それに応じて短期金利があがって住宅ローンの金利も上がります。
日本の場合は、国債金利が上昇した場合には、多かれ少なかれインフレが起きます。なぜなら、日本政府が国債を返すことが物理的にできなくなるので、日銀が円を刷って政府が税収を増やすというシナリオが想定されるからです。というか、そうするしか返す方法がありません。インフレになると、それを抑えるために短期金利が上がることになりますよね。

そうすると、住宅ローンの返済額は大きく膨らむことになります。
変動金利の住宅ローンには、「1.25倍ルール」というものがあり、5年間で増える月々の返済額は最大で1.25倍を超えないことになっています。ですから、もし金利が上昇しても5年間で返済額は1.25倍になるだけですが、それでも結構なインパクトがあります。例えば、いま月々の住宅ローン返済で10万円支払っている人は、5年後に返済額が12.5万円、10年後には15.6万円、15年後には19.5万円になる可能性も十分あるのです(5年ごと返済額見直しの場合)。

この「1.25倍ルール」というのは、月々の返済額が急激に上がらないので、一見僕らに優しいように見えますが、実は全然優しくありません。そもそも、金利が上がってしまい本来なら毎月15万円の返済が必要なところを、12.5万円しか払わないわけですから、お金が全然足りませんよね?この足りない分は一体だれが面倒を見てくれるんでしょう?
実は、僕らが支払ったお金は金利の支払いに優先的に回されるので、足りない分は元本の返済分から差し引かれます。この結果、「支払額が増えたのに元本が全然減ってない」という恐ろしい事態になってしまうのです。しかも金利が高止まりしてしまった場合は、ローンの返済期間が終わっても支払いが完了しないという事態になりかねません。その場合、銀行は「住宅ローン期間終了時に一括でお支払いいただきます」とか血も涙もないことを言ってきます。30年後にローンの元本が500万円残ってしまったら、その時そんな大金を一括で払えますか?
銀行の本当の顔が垣間見られます(笑)。

ですから、「金利が急上昇しちゃったらちょっと厳しいけど、金利が下がれば支払額も下がるから大丈夫だろう」と思っている人は考えが甘いです。金利が上昇した時期には、「1.25倍ルール」のトリックにより月々の返済額が増えた割に元本がほとんど減らないことになりますから、金利が下がった後も毎月の返済額は高止まりしたままという事態が起きうるのです。

怖いですね。

金利はどのくらい上がるのか?(固定金利)
いま、日本の財政危機により、国債の暴落(=金利上昇)が危ぶまれています。三菱東京UFJ銀行は、国債の金利上昇に向けたシナリオを公に検討しはじめました。明治安田生命は、国債の金利上昇リスクを考慮し、大ヒット商品の「一時払い終身」の販売制限を決めました。多くの金融機関が、明らかに国債の金利上昇リスクに敏感になっています。

それでは、もし本当に国債の金利が上昇したら、どうなるんでしょうか?
まず、固定金利(変動じゃないですよ!)の住宅ローンは、長期金利(=10年国債の金利)に連動していますので、国債の金利が上昇すれば当然、それに連動して金利が上がります。

まず、日本の長期金利を見てみましょう。
日本の10年国債の金利推移(過去10年)
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バブル崩壊以降一定して金利は下落し続け、もうこれ以上下がらないという1%以下の水準まできてからは安定しています。

では、日本が財政破たんの危機にさらされて国債の金利が上がるとしたら、どのくらい上がるのでしょうか?

最近の財政破綻で有名なのはギリシャですよね?
ギリシャの長期金利がどのように上がったか、ちょっとみてみましょう。
ギリシャの10年国債の金利推移(過去10年)
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あちゃー。
2年で30%も上がっちゃってますね。住宅ローンの金利が30%だったら完全にアウトですよね。絶対破産します。…その前に日本の金融機関は全部つぶれますが。

まあ、さすがにこんなケースは想定しても現実味がないと思いますので、もう少し現実的なラインとして、それなりの経済大国で財政に懸念があるイタリアやスペインを見てみましょう。
スペインの10年国債の金利推移(過去10年)
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イタリアの10年国債の金利推移(過去10年)
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グラフの数字がそれぞれ違うのでちょっと見づらいですが、近年金利が急上昇しているのが分かりますね。どちらも1年間で2%程度上昇しています。

また、20年という少し長いスパンで見ても、日本の今の金利が非常に安い水準にあることが分かります。20年前、日本の長期金利は6%だったんですよね。
日本の10年国債の金利推移(過去20年)
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さらにアメリカ・イギリスのような成熟した経済大国と比較してみると、今の日本の1%という金利が国際的にも異常に低い水準であることが分かります。
アメリカの10年国債の金利推移(過去20年)
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イギリスの10年国債の金利推移(過去20年)
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アメリカやイギリスは緩やかに低下していますが、ここ20年で平均すると4~5%程度です。

このように、最近の金利トレンドから考えると、固定ローンの金利については現実的なシナリオとして次のようなものが想定できるのではないでしょうか?

1.長期金利が1年間で2%はね上がる。
2.長期金利は5%くらいまで上がる。



金利はどのくらい上がるのか?(変動金利)
変動金利は、短期金利(翌日物コールレート)で決まるということでしたが、長い目で見れば長期金利と連動します。長期金利と短期金利の図を見比べて見てください。

日本(短期)
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日本(長期)
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アメリカ(短期)
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アメリカ(長期)
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イギリス(短期)
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イギリス(長期)
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つまり、長期金利が上昇すれば短期金利も上昇するのです。
また、日本の短期金利は、概ね長期金利より1%~2%くらい低いところで推移するというのがトレンドのようです。
しかもよーく見てみると、長期金利に少し遅れて短期金利が動くことが分かります。
これらの事実から、先ほどの長期金利のリスクシナリオに追加して下記のようなことが想定できるのではないでしょうか?

1.短期金利も1年で2%はね上がる。
2.短期金利は4%(長期金利-1%)くらいまで上がる。
3.長期金利が上がったあとに、短期金利が上がる。


※20年以上前は世界の情勢も違いすぎて参考にならないので、金利上昇のリスクシナリオはあくまで10年~20年で考えます。このため10%とか15%といった金利は想定しません。もちろん、可能性としてないわけじゃないですが、リスク管理はある程度現実的なラインでこまめにやるのが定石ですからね。


この短期金利のリスクシナリオに、皆さんの住宅ローンは耐えられるのでしょうか?

つづき
変動金利を持つことは、金利変動リスクを自分で負っているということです。個人レベルでも、ある程度のリスク管理が必要ですよね。

次回は、
 ・金利が上がると返済にどのくらいインパクトがあるのか
 ・金利が上がった時に、どうすればいいのか
 ・いま、僕たちにできること

などについて数字を交えて書きたいと思います。
お楽しみに~♪


以上。
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